LHDヘリカルコイル用超伝導導体の冷却安定性解析 −数値計算コード−

LHDヘリカルコイル用超伝導導体の常伝導伝播解析を行うための数値計算コードの特徴

LHD ヘリカルコイルに用いられているアルミニウム安定化超伝導導体の常伝導伝播過程をシミュレートするために、1次元の数値解析コードが開発された [1, 2]。以下に、この解析コードの特徴をまとめる。

(1) 超伝導導体を3個の構成部材(超伝導撚線、銅シース、アルミニウム安定化材)からなる並列導体としてモデル化。

(2) 各部材に対して1次元の熱伝導方程式を解く。

(1)
(2)
(3)

    ただし、

Tj : 各部材 (j = 1, 3) の温度
Sj : 各部材 (j = 1, 3) の断面積
Cj(T, B) : 各部材 (j = 1, 3) の比熱
kj(T, B) : 各部材 (j = 1, 3) の熱伝導率
Qj(T, B, x, t) : 各部材 (j = 1, 3) のジュール発熱
Pj,k : 各部材間 (j, k = 1, 3) の接触ペリメタ
Kj,k : 各部材間 (j, k = 1, 3) の接触熱伝達係数
hi 銅シースの4面 (i = 1, 4) から液体ヘリウムへの熱伝達係数
Pi 銅シースの4面 (i = 1, 4) の冷却ペリメタ

 

(3)  部材間では、接触熱抵抗および接触電気抵抗を仮定。

(4) 各部材の温度、磁場に対する物性値(抵抗率熱伝導率体積比熱)を正確に入力。

(5) 黒化処理された銅シース表面から液体ヘリウムへの熱伝達率は、サンプルによる実測値を使用。角度依存性も考慮。

(6) 銅およびアルミニウムにおける電流(磁気)拡散過程は、無限平板に対する2次元の解析式でモデル化。

(7) 銅およびアルミニウムの接合に伴うホール電流発生による磁気抵抗率の増大効果を理論式をもとにモデル化。定常状態における抵抗率として、短尺導体試験による実測値を再現するように係数を決定。

(8) 現在の解析では、超伝導状態への回復過程は再現できない。

 

 

LHDヘリカルコイル用超伝導導体の冷却安定性に関する数値計算 −計算結果−

LHD ヘリカルコイル用超伝導導体 KISO-32 の短尺試験時に得られた常伝導転移時の電圧波形について、数値計算コードを用いてシミュレートを試みた。実験結果と計算結果の比較を Fig. 1 に示す。

 

Fig. 1 Comparison between the experimentally observed waveform and the numerically calculated one of  the longitudinal voltage for the KISO-32 short sample. 

 

計算で得られた結果については、以下のようにまとめることができる [1,2]。

常伝導伝播時の電圧波形をほぼ再現できる。

尖頭電圧の時定数、伝播速度、定常状態の電圧レベル、最小伝播電流の外部磁場依存性、等について測定結果と近い値が得られる。

一様な外部磁場空間においても、有限時間、有限長さの常伝導伝播が生じ得ることが示された。

現在の解析では、超伝導状態への回復過程は再現できない。

 

 

LHD ヘリカルコイル用超伝導導体の冷却安定性 −動的安定性−

LHDヘリカルコイルに用いられている複合超伝導導体 KISO-32 では、高純度アルミニウムを安定化材として用いることによって、定常状態における冷却安定性を保証している。しかしながら、その低い抵抗率ゆえに、常伝導転移時において輸送電流はアルミニウム安定化材の断面内に瞬時に拡散することができない。KISO-32 導体の短尺試験時に観測された長手方向電圧タップの信号を Fig. 2 に示す。常伝導転移の直後に電圧レベルが高くなっているが、これは、(電流)磁気拡散過程の間、過渡的にアルミニウム安定化材の実効的な抵抗率が増大していることを示している。測定より、(電流)磁気拡散の時定数は、45 ms ほどである。抵抗率が高いことは、この間、導体の冷却安定性が低下していることを意味している。

 

Fig. 2 Observation of a peak voltage at a normal transition of the KISO-32 superconductor. Magnetic diffusion process in the pure aluminum core plays a role to transiently increase the effective longitudinal resistivity of the stabilizer.

 

アルミニウム安定化材における(電流)磁気拡散効果を取り入れた数値解析コードを開発し、Fig.. 2 の例のような電圧波形をシミュレートすることに成功している。この解析により、本導体の場合、定常状態に対する冷却端回復電流以下の輸送電流においても、有限時間、有限長さの常伝導伝播が生じ得ることが示された。

 

 

参考文献

[1] A.V. Gavrilin, N. Yanagi, S.Satoh, O. Motojima,"Computer simulation of normal zone propagation in the LHD helical coils", Advances in Superconductivity XI (1999) pp. 1447-1450.

[2] N. Yanagi, S. Imagawa, A.V. Gavrilin, et al., "Analysis on the normal transition event of the LHD helical coils", IEEE Trans. Appl. Supercond. Vol.10, No.1 (2000) pp. 610-613.